機能的デザインと商標使用の違い
現行商標法第29条第1項第1号は、「商標が、次に掲げる識別性を有していない状況のいずれかに該当する場合、登録を受けることができない。一、指定した商品又は役務の品質、用途、原料、産地又は関連する特性を描写する説明のみで構成されたもの。」、同法第30条第1項第1号は、「商標が、次に掲げる状況のいずれかに該当する場合、登録を受けることができない。一、商品又は役務の機能を発揮するためにのみ必要なもの。」、同法第36条第1項第1号は、「次に掲げる状況は、他人の商標権の効力による拘束を受けない。一、商取引慣習に合致する信義誠実の原則により、自己の氏名、名称、又はその商品若しくは役務の名称、形状、品質、性質、特性、用途、産地又はその他商品若しくは役務自体に関する説明を表示するもので、商標として使用しないもの。」と規定している。以上から明らかなように、商標が単に指定商品の用途や関連する特性を説明するものであったり、商品の機能を発揮するためにのみ必要なものであったりする場合は、登録を受けることができない。前述の識別性のない商標が他の理由で登録されたとしても、他人は、そのような商標図案の使用は商品の用途を表示する目的にすぎず、商標権の効力に拘束されないと主張することができる。
本件では、O-ONE INTERNATIONAL LIMITED COMPANY(中国語社名:「圓一國際有限公司」、以下「O-ONE社」という)がMagSafeワイヤレス充電器のマグネット配列の図案「」について商標登録(以下「係争商標」という)を取得した。その後、EVOLUTIVE LABS CO.(中国語社名:「愛進化科技股份有限公司」、以下「EVOLUTIVE社」という)のスマホケースブランド「RHINOSHIELD犀牛盾」( 日本語:ライノシールド)は、アップル社のMagSafeワイヤレス充電技術に合わせるため、スマホケースの背面パネルの相対位置にマグネットを装着した。これにより、スマホケースを装着した状態でも、携帯電話内部のマグネット構造に携帯電話を確実に吸着させることができる。この「RHINOSHIELD」スマホケースにマグネットを装着することで、係争商標に類似した模様「」が形成されている。知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)は、112年(西暦2023年)度民商訴字第40号判決において、「RHINOSHIELD犀牛盾」スマホケースの背面パネルに係争商標の図案を使用することは、携帯電話のMagSafeワイヤレス充電技術に合わせるための機能的デザインであり、「RHINOSHIELD犀牛盾」商品のパッケージには、「RHINOSHIELD」又は「犀牛盾」の商標及びブランドが明確に表示されているため、係争商標の使用は販売の目的ではない旨述べた。
IPCCはさらに以下のように指摘している。アップル社は係争商標の登録が認められる前にすでにMagSafeワイヤレス充電技術を発売しており、MagSafeワイヤレス充電技術をサポートするために、背面パネルに係争図案を使用したスマホケースやその他のアクセサリーを発表した。「RHINOSHIELD 犀牛盾」スマホケースは、アップル社のMagSafeワイヤレス充電技術に合わせるために背面パネルに係争図案を使用しており、係争図案はO-ONE社が最初に使用又は創作したものではないため、「RHINOSHIELD 犀牛盾」スマホケースがMagSafeワイヤレス充電技術を実現するために係争図案を使用することは、当然ながら商標権の効力に拘束されない。
本件において、EVOLUTIVE社は起訴当初、係争商標は取り消されるべきである旨主張していたが、その後、この主張を撤回し、EVOLUTIVE社が係争商標の商標権の効力に拘束されないことの確認を求めたにとどまった。したがって、識別性の欠如その他の理由により、係争商標が登録されるべきでないか否かは、異議申立て及び無効審判の手続により判断されることになる。