ニューズレター
コンピュータ・ソフトウェアの改作による著作権侵害の有無に関する検討
「改作」とは、著作権法第3条第1項第11号の規定により、翻訳、編曲、翻案、映画化又はその他の方法により改めて原著作物を創作したことをいう。台湾知的財産裁判所は、改作によって創作された二次的著作物には依然として原著作物の表現が含まれる必要があり、原著作物を利用して異なる著作物が創作された場合、著作権法上でいう二次的著作物ではなく、全く別の新しい創作であるため、当然原著作物の著作権者の改作権を侵害することはないとの判断を示した。
知的財産裁判所が2015年12月3日に下した103年度(西暦2014年)民著上字第12号判決は、コンピュータ・ソフトウエアを改作することが著作権を侵害するか否かに関する事例であるが、裁判所は、たとえコードが他人の著作物に基づき修正したものであっても、修正の度合いと機能変更によって原著作物と大きく異なれば、修正後の著作物が二次的著作物に属するとは認められず、独立した著作物であり、原著作物の著作権を侵害するものではないと認めている。たとえコードの中の一部が同じであったとしても、同じ部分が著作権法で保護されていない、又は同じ部分が表現方法に限りがあるため著作権法で保護されない場合には、当該修正後の著作物も原著作物の著作権を侵害するとは認められない。
この事例の背景事実は以下のとおりである。控訴人甲はA社と契約を締結し、係争ソフトウエアIを開発し、係争ソフトウエアIの著作権は甲が単独で所有し、無償で当該製品を複製、改作及び使用できるのはA社とその関連企業のみである旨を約定した。その後、双方はもう一つの契約を締結し、甲が係争ソフトウエアIIを開発し、その著作権は甲に帰属し、当該製品を使用できるのはA社のみである旨を約定した。被控訴人乙社は、以前はA社の関連企業であったが、その後分割された。甲は、乙が甲の同意を得ることなく、A社から分割した後も依然として係争ソフトウエアIとIIを使用・改作し続け、その著作権を侵害したことは明らかである旨の主張をした。
乙は、係争ソフトウエアのコードはその業務上の使用に不足するものであったため、自社が使用した係争ソフトウエアのコードはすでに大幅に修正したものであり、乙は適合するコードを自ら開発し、かつ新しい機能を多く追加したものであるため、新しいソフトウエアは独立した著作物であり、甲の著作権を侵害していない旨の抗弁を提出した。
知的財産裁判所は、乙社は会社分割によりA社から分離された後、係争ソフトウエアIを次々と修正し、多くの部分を追加しており、それらを対比したところユーザーインターフェースはすでに同じものではなく、インターフェース機能、ファンクション・ブロックの配置及びデザインも異なっていることが分かる、との判決を下した。乙が使用したソフトウエアIに甲社のソフトウエアと同様のスペルミスが存在しているが、この部分について裁判所は、データフィールドの内容に対応するフィールド名の命名表現方法に過ぎず、ユーザーインターフェースの外観全体の表現に関する対比においてそれを考慮する必要はなく、且つスペルミスと思われるデータフィールド見出し又はタイトルは、著作権法第9条第1項第3号の規定を適用すべきで、著作権の保護の対象としてはならないと判断した。よって、係争ソフトウエアIについて、乙は権利侵害をしていない。
係争ソフトウエアIIについては、A 社はすでに係争ソフトウエアIIを完全に書き換えて、パラメータ、パラメータの設定ファイル、データベース・リンクの呼び出し及びデータベースのフィールド等の共通部分を残しているのみであった。よって、A社はソフトウエアIIを自ら開発し直して、それを乙社に移行した。乙社はA社からのソフトウエアIIを複製して使用したが、甲の係争ソフトウエアIIの著作権を侵害しておらず、かつ、乙社は自ら.Net(ドットネット)を用いて開発し、甲が使用したプログラミング言語JAVA(ジャバ)とは異なるもので、コンピュータ・ソフトウエアのソースコードのテキスト表示方法も異なることから、自ずとテキストによる侵害も構成しないと言える。
裁判所は最終的に、甲は係争ソフトウエアI及びIIの著作権を有しているが、乙に係争ソフトウエアについての著作権侵害行為と係争ソフトウエアの侵害についての故意や過失はないと認定して、甲の控訴を棄却する判決を下した。