ニューズレター
「連鎖販売取引管理法」施行
最新の「連鎖販売取引管理法」(「多層次傳銷管理法」、以下「本法」)が2014年1月14日に立法院の最終審査で可決され、現行の「公正交易法」(日本の「不正競争防止法」と「独占禁止法」の要素が含まれる)における連鎖販売取引関連条文の規範に代わり、2014年1月29日に総統によって公布され、即日施行された。
現行の連鎖販売取引行為は、主に、公正取引法における五つの条文(第23条〜第23条の4)と「連鎖販売取引管理規則」(「多層次傳銷管理辦法」、以下「管理規則」)を規範の依拠とする。市場競争行為の規制と連鎖販売取引の規制の性質は異なり、かつ、連鎖販売取引が人間関係を介して急速に拡大し、不法となる、又は変質していけば、往々にして重大な社会問題を引き起こすことになる。それを防ぐため、「公平交易委員会」(「公正取引委員会」、以下「公平会」)は、完全な管理法制を構築し、連鎖販売取引行為に対する規制と監督を強化するため、本法草案を提出した。
本法は、公正取引法及び管理規則の枠組みを継続しつつ、実際の法執行で生じた問題について規範を強化するものである。本法は公布日から施行し、同時に、公正取引法の連鎖販売取引に関する規定の適用を停止する。以下、本法規範の重点を要約する。
1. 犯罪を有効に取り締まるため、変形連鎖販売取引行為の刑事罰を懲役3年から7年に引き上げる
本法第18条には、「連鎖販売業者は、その会員の主な収入源を、合理的な市価での商品又は役務の販売促進、販売行為としなければならず、他人を紹介して入会させることを主な収入源とすることはできない」と規定されている。連鎖販売業者が第18条規定に違反する事業者である場合、最高で1億新台湾元の罰金に処すことができ、その業務を執行する法人代表者、代理人、被雇用者又はその他従業員が受ける刑罰は、現行の最高3年以下の懲役から7年以下の懲役に引き上げられる。
2. 退会や返品に係る管理規範を強化し、会員が無条件で契約を解除できる期間を契約日より「14日以内」から「30日以内」に延長する
本法には、会員が契約後に、契約の解除又は終了を連鎖販売業者に書面で通知できる期間を「契約日より14日以内」から「契約日より30日以内」に延長して規定されている。当該「30日」の期間が経過した後も、会員は随時、書面をもって契約を終了することができる。連鎖販売業者は、会員に、契約の解除又は終了によって受けた損害につき損害賠償を請求する、又は違約金を請求することはできず、また、会員が購入した商品又は役務の返品及び返金手続きを本法規定により行うことを不当な方法で妨害することはできない。
3. 連鎖販売業者に誠実告知義務及び財務情報開示義務を課す
本法には、連鎖販売業者は会員が当該事業者の連鎖販売計画又は組織に参加する前に、以下に掲げる事項を告知しなければならない、と規定されている。(1)連鎖販売業者の資本額及び営業額、(2)連鎖販売取引制度及び加入条件、(3)連鎖販売取引関連法令、(4)会員が負わなければならない義務と負担、計画又は組織からの脱退条件、及び脱退によって生じる権利と義務、(5)商品又は役務関連事項、(6)規定により連鎖販売業者が商品又は役務の買戻しによる減損損失を控除することができる場合、その計算方法、基準及び理由、(7)主管機関から指定されたその他の事項。
このほか、連鎖販売業者は、毎年5月末までに、前年度の連鎖販売取引運営業務の貸借対照表、損益計算書を準備しなければならない。マルチ商標事業者の払込資本額が一定額に達した場合、又はその前会計年度の連鎖販売取引運営業務の営業額が一定額に達した場合、前述の財務諸表は公認会計士の監査を受けなければならない。また、財務諸表は連鎖販売業者の主要な営業所に備え置かなければならず、会員が財務諸表を閲覧することを許可しなければならない。
4. 公平会の行政管理措置を継続し、公平会の判断・処理能力を高める
本法には、連鎖販売業者は連鎖販売取引行為開始前に、まず公平会に報告しなければならない、と規定されている。このほか、連鎖販売業者は月ごとに、中華民国国内における組織の発展、商品又は役務の販売、報奨金の支給及び返品処理などの状況を記載するとともに、公平会の調査に備えて当該資料を主要な営業所に備え置かなければならない。
公平会は、随時、人員を派遣して検査する、又は期限を定めて連鎖販売業者にその運営発展状況の報告を提出するよう命じることができ、本法の規定に違反するものについては、告発する又は職権で調査・処理することができ、違法態様に応じて、過料その他の行政処分に処すことができる。
5. 連鎖販売業者と会員の紛争を有効に処理するため、連鎖販売取引保護機構を設立する
届出を完了した連鎖販売業者は一定の財産を寄付して、連鎖販売取引保護機構を設立しなければならず、当該機構設立後は、公平会が指定した金額の保護基金及び年会費を当該機構に支払わなければならない。当初の寄付金額は、当該機構に支払わなければならない上記保護基金及び年会費に充当することができる。
前述の保護機構の設立目的は、会員及び連鎖販売業者の権益の確保、ならびに、両者間における紛争の処理の調整にある。連鎖販売業者が既に主管機関の規定により保護基金及び年会費を納めている場合、保護機構に保護を請求することができる。連鎖販売業者が前述の規定により寄付又は支払いをしていない場合、10万新台湾元以上500万新台湾元以下の罰金に処すことができる。公平会が命令した期限を過ぎても連鎖販売業者がその行為を改めない場合、その行為を改めるまで、命令を受けるごとに、20万新台湾元以上1000万新台湾元以下の罰金に処すことができる。
当事務所では、これまで、連鎖販売取引事業をグローバルに展開する企業数社の中華民国での連鎖販売計画と組織の構築をサポートするとともに、中華民国の法令を遵守するためのコンサルティング・サービスを提供してきました。本法についてご質問等ございましたら、ご遠慮なく当所までご連絡ください。