ニューズレター
釈字第713号解釈【期限を過ぎてから源泉徴収票を提出した場合の処罰】
司法院大法官(憲法裁判所裁判官に相当)は2013年10月18日に、期限を過ぎてから源泉徴収票(「扣繳憑単」)を提出した場合の処罰について、釈字第713号解釈を作成した。本件は、申立人の邱復生(以下「申立人」)が2000年から2003年までの間に、会社が外国機構に衛星放送料を支払った際、所得税法第88条の規定により20%の所得税の源泉徴収を行わず、その後、命じられた期限内に税金を追納したものの、期限内に源泉徴収票を追加提出しなかったため、当時の「税務法規違反案件減免処罰基準」(「税務違章案件減免処罰基準」)(以下「減免処罰基準」)第6条第1項第2号の規定(即ち、源泉徴収義務者が、源泉徴収義務又は源泉徴収票提出義務のいずれに違反した場合も、一律に、支払うべき税額の1.5倍の過料を当事者に科す、とする規定)に照らして、国税局が申立人に2000万新台湾元余りの過料を科したことが発端である。申立人はかかる処分に対し不服を申し立て、行政訴訟を提起し、最高裁判所への上訴を経て敗訴が確定した。その後、当事務所は申立人の委任を受けて、司法院大法官に憲法解釈の申し立てを行い、大法官は釈字第713号解釈を作成し、「減免処罰基準第6条第1項第2号の規定は違憲である」との判断を下した。当該第713号解釈の主旨を以下に要約させていただく。
1. 確定した最終判決は、実質的に、減免処罰基準第6条第1項第2号の規定を適用しており、申立人はこれに基づいて憲法解釈を申し立てることができる。
申立人は次のように主張している。最高行政裁判所の2008年の97年(西暦2008年)度判字第1000号判決には、当該判決が減免処罰基準を適用したと明記されてはいないが、当該判決の法律見解から、この確定した最終判決が当該減免処罰基準を判決の基礎の一部としていると判断することができるため、本件憲法解釈の客体とすることができる。
2. 源泉徴収義務違反及び源泉徴収票提出義務違反の両者が国庫の税収及び租税の公益性にもたらす損害の度合いは明らかに異なる。仮に、一律に、支払うべき税額の1.5倍の過料を科すのであれば、比例原則に明らかに反し、また、憲法第15条の人民の財産権保障の趣旨にも反する。
大法官は次のように判示している。源泉徴収義務者の源泉徴収義務には2種類あり、1つは「源泉徴収義務」で、もう1つは「源泉徴収票提出義務」である。しかし、これら2種類の義務それぞれに対する違反が国庫の税収及び租税の公益性にもたらす損害の度合いは明らかに異なる。
簡単に言えば、源泉徴収義務者が源泉徴収していない又は源泉徴収が過小となっている税額を期限内に既に追納しており、単に、事実に基づいて源泉徴収票を作成し追加提出していないだけである場合、徴税機関による課税データの把握及び納税義務者の決算報告に影響を及ぼすものの、当該源泉徴収義務者は既に税金を追納しているため、それによって生じるマイナスの影響は税金を追納しない場合よりも小さいはずである。仮に、源泉徴収していない又は源泉徴収が過小となっている税額に基づいて、一律、1.5倍の過料を当事者に科し、徴税機関が具体的な法規違反状況を斟酌し事の重大さに応じて過料の額を裁量することを認めないのであれば、その処罰は明らかに必要な程度を超えており、憲法第23条の比例原則に合致せず、また、憲法第15条の人民の財産権保障の趣旨にも反する。
当事務所では長年にわたって憲法解釈実務に先駆的に取り組み、「大法官解釈」(憲法解釈)申し立てについて実務経験を積んできた。また、当事務所の公法及び税務案件に精通した弁護士団からなる専門グループが提出する専門法律意見は、我が国の当該分野における実務見解の方向性決定に常に大きな影響を与えており、今日に至るまで、当事者のための救済機会を数多く勝ち取ることに成功している。本釈字第713号解釈は当事務所メンバーが税務及び公法分野での専門性を発揮して獲得した大きな成果であり、これらの成果は、我が国の納税義務者の租税基本権にさらなる保障をもたらしたのみならず、我が国における納税者の人権保護を国際基準に合わせる、極めて重要な一歩ともなっている。