ニューズレター
「全民健康保険」医薬品価格の調整と特許権の関係
「全民健康保険法」(※台湾の医療保険制度である「全民健康保険」制度の依拠法)第46条第1項には「保険人は、市場取引情況により医薬品価格を合理的に調整しなければならない。医薬品は特許期間満了1年目から値下げ調整を開始し、5年以内に市場取引情況により、徐々に合理的な価格に調整していかなければならない」と規定されており、特許の有無を「全民健康保険」医薬品価格(以下、「健保薬価」という)の区別基準とし、原則として医薬品の特許期間満了後に初めて価格を下降調整できることを明文化している。しかし、医薬品につき、特許期間を過ぎているか否か、又は特許期間満了後、どれ程経過しているかにかかわらず、その価格は、市場取引情況により合理的に調整されなければならない。
2013年12月2日衛生福利部(※台湾の公衆衛生、社会福利及び社会福祉に関する業務全般を担当する官庁。日本の厚生労働省に相当)は前記条文第2項の規定に基づいて、「全民健康保険薬品価格調整作業規則」(「全民健康保険薬品価格調整作業辦法」)を公布、施行し、前記条文に開示されている価格調整原則を具体化した。しかし、注意すべきは、当該作業規則中の医薬品特許についての特殊な定義である。かかる定義には、「医薬品の有効成分又は有効成分の組合せを以て、我が国の専利法により取得した特許」としか記されていない(「全民健康保険薬品価格調整作業規則」第2条第1項第1号参照)。そのうち、当該有効成分には、医薬関連の専門家や学者が臨床治療効果に役立つと認定した異性体、特殊な結晶形、水和物などが含まれている(「全民健康保険薬品価格調整作業規則」第2条第2項参照)。
これに準ずれば、医薬品メーカーは、その医薬品の活性成分特許だけではなく、臨床治療効果に役立つ当該薬品活性成分の異性体、特殊な結晶形、水和物などの特許によっても、その「健保薬価」の値下げ調整を先延ばしすることができる。このほか、「全民健康保険薬品価格調整作業規則」では医薬品特許の範囲が縮減されており、たとえば医薬品の剤型に係る特許は特許範囲から除外されているが、このことが、医薬品の剤型の改良によって臨床治療効果を増進する『me-better drug』の薬品価格に衝撃を与えることになるのか否か、注視しなければならない。