ニューズレター
中国地区住民の台湾での不動産取得に関する最新法令動向
内政部は、2013年11月26日に公告(台内地字第1020351411号通達)を行い、2014年1月1日から、中国地区住民による台湾地区での不動産取得について総量規制制限が採用される。実際には、中国地区住民による台湾地区での不動産取得は、内政部が新たに制定する総量規制制限のみを受けるわけではなく、2002年8月8日に政府は既に「中国地区住民による台湾地区での不動産所有権の設定又は移転に関する許可規則」(「大陸地区人民在台湾地区取得設定或移転不動産物権許可弁法」。以下「本規則」)を公布し、中国資本による台湾での不動産の取得、不動産所有権の設定又は移転の申請案を審査してきた。
本規則は「台湾地区及び中国地区住民関係條例」(「台湾地区與大陸地区人民関係條例」。以下「本條例」)第69条の規定に照らして、これまで2度にわたって改正されており、現行規則は計20条からなる。本規則及び関連法令の、中国資本による台湾での不動産取得についての制限は、大まかに以下の6項目に分類される。
1. 資格の制限
本規則第4条によれば、台湾で不動産を取得する主体には、中国地区住民、本條例により許可を受けた法人、団体又はその他の機構、及び「会社法」(「公司法」)により認可を受けた中国資本の企業が含まれる。但し、中国地区住民が中国地区の党務、軍事、行政又は政治性を具えた機関(構)、団体の職務に就いている、又はメンバーである場合、不動産を取得することができない。
「中国地区住民」とは、本條例第2条第4号に基づけば、中国地区に戸籍を有する住民を指す。本條例第3条により、中国地区住民に係る規定は、中国地区住民が国外に逗留する場合に適用される。したがって、前記規定は、台湾で居留、停留又は結婚した中国地区住民にも適用される。
2. 使用目的の制限
本規則第6-1条には、中国地区住民は「住宅」の目的でのみ不動産の所有権を取得することができる、と規定されている。また、本規則第7条及第9条の規定によれば、中国地区の法人、団体、その他の機構又は中国資本の会社は「業務上の必要」のため、又は台湾地区の「経済全体又は農牧業経営にプラスの影響を及ぼす投資」に従事する場合に、はじめて不動産を取得することができる。
「業務上の必要」とは、業務要員の居住に供する住宅及び経営上必要な工場建屋、営業所又はオフィスなどを指す。「経済全体に係る投資」とは、観光、工業又はその他中央目的事業主務機関によって公告された投資項目についての開発又は経営を指す。「農牧業経営に係る投資」とは、行政院農業委員会によって公告された農業技術集中及び資本集中の分類及び基準を満たす投資を指す。
3. 譲渡の制限
本規則第6-1条には、中国地区住民が不動産所有権を取得した場合、その登記が完了して満3年を経過しなければ、譲渡することができない(但し、継承、強制執行、収用又は裁判所の判決により譲渡する場合は、この限りでない)、と規定されている。
4. 在留期間の制限
「中国地区の専門家による台湾での専門活動への従事に関する許可規則」(「大陸地区専業人士来台従事専業活動許可弁法」)第12条第3項によれば、中国地区の住民が既に台湾地区で不動産所有権を取得している場合、その台湾入国回数は制限されないが、年間の在留期間は4ヶ月を超えてはならない。
5. 形態の制限
内政部2010年9月2日台内自第0900175971号通達には、「中国地区住民による台湾での不動産所有権の取得、設定又は譲渡の共同申請は、人数過多、管理統制の困難という結果を生じやすいため、国家、社会の安全を脅かすおそれがある。さらには、同一の不動産につき、共有持分の共有者数が多すぎる場合、表面上は台湾で不動産を購入する中国国民は多いが、実質的に所有する不動産は多くなく、資金及び技術を有効に運用して国家全体の土地資源の開発利用を高めるという立法趣旨の利点を生かせない。よって、中国地区住民が共有方式で台湾において不動産所有権を取得、設定又は譲渡することは、より難しくなるものと思われる。
6. その他の制限
本條例第2条及び第3条には、台湾で不動産所有権の取得、設定又は譲渡の申請を許可しないことが特別に規定されている。たとえば、国家に影響を及ぼすであろう重大な建設を申請する場合、土地の独占投機又は投機的売買に関わる場合、申請区域が事業目的主務機関により取得禁止を定められた土地である場合などが含まれる。このほか、政府機関は中国地区住民が台湾で不動産所有権を取得、設定又は譲渡するための融資取得についても、その他の制限を設けている。
今回、内政部が公布した総量規制規定において、中国地区住民が取得可能な不動産の年度上限は、土地面積が13ヘクタール、建物が400戸であり、年度上限を下回った場合、その余剰分を翌年度以降に保留することはできない。また、長期総量規制(中国地区住民が最終的に台湾で取得可能な不動産総量)に係る不動産取得上限は、土地面積が1,300ヘクタール、建物が2万戸である。当該数量の計算認定方法は、土地については申請書に記載されている土地標示面積の合計であり、建物の戸数については申請書に記載されている主建號で計算する。上記規定につき、内政部は柔軟に調整することができ、原則として半年ごとに長期総量及び年度数量を検討し、必要な場合は、年度数量の使用情況を見て、関係機関と協議したうえで、柔軟かつ適宜に調整することができる。特殊な案件があれば、内政部は特別案件の許可を与え、関連機関と協議を行ったうえで、特別案件としてその数量を定めることができる。また、内政部地政司(※土地の測量、登記、公有地の管理などに関する事務を担当)は、「当年度取得した建物が400戸未満であっても、土地面積が13ヘクタールに達している場合、当該年度は、中国地区住民による不動産取得を許可しない」とも表明している。即ち、中国資本による台湾での不動産取得には、土地面積と建物の戸数という二つの規制基準があるものの、面積の制限は建物数の制限より優先的に適用される。
以上から、総量規制は、決して、中国地区住民による台湾での不動産取得についての我が国における唯一の制限ではないことがわかる。実際においても、中国地区住民による台湾での不動産取得に対する制限はかなり厳しく、新たに制定される総量規制は、実質的に、元来の制限規範をさらに明確にしたものである。内政部が公布した本規則の執行情況によれば、2002年8月8日の本規則制定から2012年9月30日までの10年間で、中国資本による台湾での不動産取得数は計122件、その価値は約15億新台湾元であり、そのうち、中国の自然人による取得が114件を占め、多くは中国籍の配偶者が取得した小面積住宅である。関連制限が明らかになった後、中国資本による台湾での不動産取得件数及びその投入金額がこれによって増加するか否かは、今後もその動向を注視していく必要がある。