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専利権侵害訴訟の裁判費用


簡秀如/James Yang

刑事訴訟当事者が裁判費用を納付する必要がないのとは異なり、台湾の民事訴訟制度では費用徴収制を採用している。原告は訴訟提起時に「訴訟物の価額」に応じて関連規定により裁判費用を計算し納付する必要があり、当該費用納付後、裁判所は訴訟を受理する。いわゆる「訴訟物の価額」とは、訴訟対象物の訴訟提起時の取引価額、又は原告が訴訟対象物につき有する利益を指す。民事訴訟法の規定によれば、裁判費用及びその他の訴訟費用は、敗訴した当事者が負担しなければならず、一部勝訴、一部敗訴という情況である場合は、裁判所が判決において、それぞれが負担すべき比率を詳しく説明することになる。
 
専利(中国語の「専利」には発明特許、実用新案、意匠の意味が含まれており、混乱を防ぐため、以下、これら全ての意味を含む場合又はいずれを指すのか不明である場合には「専利」と原文表記する)権侵害訴訟も民事訴訟に属すため、原告は訴訟提起時に裁判費用を納付しなければならない。ゆえに、裁判費用の多寡も、原告が訴えを提起するか否かを検討する際に考慮する必要のある要素である。一般的に、専利権者が訴訟提起時に最低限主張することになる請求権は2種類あり、1つは損害賠償請求権、もう一つは侵害排除・侵害防止請求権である。前者の「訴訟物の価額」は即ち原告の主張する損害賠償金額であるが、後者は、侵害行為をしてはならないと被告に要求するものであり、この請求内容には具体的な価額がなく、ゆえに、裁判所がその訴訟物の価額をどのように決定すべきであるのか、しばしば問題となる。民事訴訟法第77条の12には「訴訟物の価額を算定できない場合、第466条の規定により、第三審に上訴することができない最高利益の総額に十分の一を加算してこれを定める」(注:現在、第三審に上訴することができない最高利益の総額は150万新台湾元であるため、この規定により定める訴訟物の価額は165万新台湾元である)と規定されている。しかし、これまでは、被告の主張する侵害排除・侵害防止請求権の訴訟物の価額が決して算定不可能なものではない場合、依然として、侵害排除・侵害防止請求権の価額を調査及び確認するよう裁判所に再三請求することにより、裁判所の実質審理を遅延させ、訴訟を長引かせるといった情況がよく見られた。
 
また、専利権者が損害賠償請求権及び侵害排除・侵害防止請求権を同時に主張する際に、その訴訟物の価額を合わせて計算しなければならないのか、又はいずれか1つを選んで計算しなければならないのかについても、これまでの専利訴訟実務において解決困難な紛争の1つであった。民事訴訟法第77条の2の「一の訴えで複数の請求を主張する場合、それぞれの価額を合わせて計算する。但し、主張する複数の対象が互いに競合する、又はいずれかを選択しなければならない場合、その訴訟物の価額は、そのうち最も高い価額のものにより定めなければならない。一の訴えに付帯して生じた利息、損害賠償、違約金又は費用を請求する場合、その価額を合わせて計算しない」とする規定から、上述の問題の争点は、専利訴訟中の損害賠償請求権と侵害排除・侵害防止請求権との間に「付帯」関係があると認めるべきか否かにあり、「付帯」関係がある場合、併せて計算する必要はないことがわかる。これは、原告となる専利権者に比較的有利な説である。
 
最高裁判所は20081211日に作成した97年(2008年)度台抗字第792号裁定のなかで、「侵害排除・侵害防止請求権及び損害賠償請求権は、『専利法』(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)の異なる規定により声明するものであるが、それに基づいて請求する訴訟物の法律関係は専利権侵害に由来する。双方の間には互いに従属又は関連する関係が存在し、一の訴えの付帯請求に属すため、その価額を合わせて計算しない」と判示した。この裁定に基づいて知的財産裁判所は、その後数年間の実務全てにおいて、侵害排除・侵害防止請求権と損害賠償請求権中の訴訟物の価額の高いものを裁判費用計算の基礎とした。また、同時に、知的財産裁判所は手続きの進行を速めるため、簡単な調査を行った後、大半において前記の民事訴訟法第77条の12の規定を直接援用し、165万新台湾元を侵害排除・侵害防止請求権の訴訟物の価額とした。かかる判断は、専利権侵害訴訟がいわれのない手続上の議題によって不当に遅延させることを回避するうえで、非常に大きな役割を果たした。
 
しかし、最高裁判所は最近その見解を変更し、2013424日に102年(2013年)度台抗字第317号裁定のなかで、「侵害排除・防止請求権の対象は現在及び将来の侵害行為であるのに対し、損害賠償請求権は過去に既に生じた損害を対象としているため、両者の間には主従の付帯関係が存在しない。したがって、その価額を併せて計算しなければならない」と判示している。このほか、最高裁判所は上記裁定のなかで、「知的財産裁判所が調査せず、また、その調査結果により侵害排除声明の訴訟物の価額を算定することができない理由を説明せずに、双方が共に算定の根拠を提出できないことだけを理由に、その訴訟物のの価額を算定できないと認めたことは妥当ではない」とも判示している。
 
この裁定後、知的財産裁判所は既にその方針を変えており、侵害排除・侵害防止請求権及び損害賠償請求権の訴訟物の価額を合わせた後、裁判費用を計算している。しかし、侵害排除・侵害防止請求権の訴訟物の価額につき、知的財産裁判所が比較的踏み込んだ調査を行ったうえで、上記民事訴訟法第77条の12の規定を援用して165万新台湾元を基準とするか否かについては、現在、依然としてその動向を注視する必要がある。
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