ニューズレター
パテントプール形成結合案を条件つきで容認
行政院公平交易委員会(「公正取引委員会」。以下「公平会」)は2011年3月30日の委員会議で、Hitachi、Panasonic、Philips、Samsung、Sony及び訊連科技股份有限公司(以下「Cyber Link」) などがそれぞれOne-Blue, LLCの6分の1の株式を保有するとともにパテントプールを形成し、One-Blue, LLCが互換性のあるブルーレイ製品の製造に必要なエッセンシャル特許のライセンスを行うことにつき、公平会に結合申請を提出したことに関して、「公平交易法」(※日本の「不正競争防止法」「独占禁止法」の要素が含まれる)第12条第2項の規定に基づき、条件つきで、その結合を容認する旨の決議を行った。 |
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公平会は「結合に参加する6事業者(申請者)自らが、ブルーレイ製品の製造に必要な特許技術を所有しており、実際にブルーレイ製品の生産にも従事している。よって、本案が関わる市場は、ブルーレイと関連する国内の製品市場、技術市場及びイノベーション市場である。本案件のパテントプール関連契約によると、当該パテントプールには、独立した特許専門家が定期的にしんさし、必要性や、代替性を有する特許、且つ有効な特許のみが含まれ、かつ閉ざされたパテントプールではなく、全てのエッセンシャル特許の所有者に開放されなければならない。また、パテントプールに参加したすべてのライセンサーは、単独セパレートライセンスを求めるライセンシーに対し、合理的で非差別的な条件(RAND)をもって個別にライセンシングを行わなければならない。また、プールメンバーが共謀してライセンシーの機密情報を交換する可能性を防ぐため、関連条項を定めて、ライセンサーによる機密情報の開示を禁じ、また、ライセンシーが出荷前に一括ライセンスを申請する際に提供した情報をライセンサーが入手することを防ぐ条項もある。このほか、当該パテントプールのライセンスバックの範囲はエッセンシャル特許にのみ限定され、かつライセンスバックが許可されたライセンサーは、独自にその特許をライセンスすることができ、ライセンスバックによりライセンシーの研究開発の動機が低下することを防ぐ。パテントプール関連契約にも、ライセンサーが競合技術を使用したり、競合性を有する規格又は製品を開発したりすることを阻む如何なる条項もない」と述べている。 |
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公平会はさらに、「我が国の事業者は、現在もブルーレイ技術輸入者であるため、本結合を禁止すれば、我が国のブルーレイ製品メーカーは各特許所有者のそれぞれとライセンス協議を行わなければならず、その取引コスト及びライセンス料の合計は、One-Blue社を介してライセンスを受ける場合よりも高くなるものと思われる。パテントプールを通じて必須特許のライセンスを受ければ、国内メーカーにとっては容易で、かつ取引コストも抑えることができ、さらに、権利侵害及び訴訟リスクを回避することもできる。また、結合に参加する事業者も自らブルーレイ製品の製造と販売に従事しており、当該パテントプールによって第三者がライセンサーの必須特許を使用する機会を増やし、川下の市場競争を活発化することができる。また、ライセンサーに機密情報を入手又は交換させなければ、川上と川下の垂直競争に不利な影響を与えることもない」と述べている。 |
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公平会は、総合的に検討した結果、「本結合案は我が国の事業者がライセンスを受ける際の取引コストを引き下げるのに役立ち、その全体に対する経済的な利益は競争制限の不利益よりも大きい」と認め、また、申請者がパテントプールを利用して競争を制限することを防ぐため、公平会は、委員会議において、公平交易法第12条第2項の規定に基づき、条件つきで結合を認めることによって、全体的な経済利益を確保する旨の決議を行った。本案に付された条件は以下のとおりである。 |
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一、 |
申請者はブルーレイ製品について価格又は生産量を制限する協議や重要な取引情報を交換するなどの連合行為を行ってはならない。 |
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二、 |
申請者及びOne-Blue, LLCはライセンシーの技術使用範囲、取引対象及び製品価格を制限してはならない。 |
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三、 |
申請者及びOne-Blue, LLCは、ライセンシーが使用許諾を受けた特許の必要性及び有効性について争うことを制限してはならない。 |
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四、 |
申請者及びOne-Blue, LLCは、ライセンシーが使用許諾期間中又は期間満了後に、競合商品の研究開発、製造、使用、販売、又は競合技術の採用を制限してはならない。 |
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五、 |
申請者及びOne-Blue, LLCは、ライセンシーに使用許諾した特許に関する内容、範囲又は特許の有効期限などの提供を拒んではならない。 |
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六、 |
申請者はパテントプール契約締結後、公平会に当該契約内容を提出し、その審査を受ける。 |
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本案件は、公平会がパテントプールの結合申請案について決定を下したはじめてのケースであり、その市場の定義、必須特許の審査メカニズム及びパテントプールの競争分析などは、いずれも今後のパテントプール申請案の参考とすることができる。 |