ニューズレター
禁反言原則は商標紛争に適用可能
「禁反言(File Wrapper Estoppel)」は「出願経過禁反言(Prosecution History Estoppel)」の略称であり、特許侵害訴訟又はその他の紛争事件の重要な原則の1つである。特許法には禁反言について規範がないものの、智慧財産局が制定した「特許侵害鑑定要点」によれば、禁反言は、特許権者が「均等論」を楯に、特許出願から権利保護に至るまでの過程において(如何なる段階又は如何なる書類においても)既に特定された又は既に排除された事項について再度主張することを防ぐものである。特許請求の範囲は特許権の範囲を特定する根拠であり、一旦公告されれば、何人も出願から保護に至るまでの過程における全ての段階の書類を入手することができ、特許権者が当該過程において行った補充、補正、訂正、書類回答及び口頭陳述に対する信頼に基づいて、特許権者が「均等論」を楯に既に限定又は排除された事項について再度主張することを認めない。
商標権侵害又はその他紛争事件に「禁反言」を適用するか否かについて商標法又はその他法令には明文規範がなく、過去の多くの案例において当事者はかかる禁反言原則を引用して主張してきたが、裁判所はこの問題に関する見解をほとんど表明してこなかった。
ここで注目に値するのは、最高行政裁判所が最近、いくつかの判決において商標紛争事件にはなおも禁反言原則適用の可能性があると認めている点である。そのうち、最高行政裁判所2005年度判字第1566号判決は、ある商標異議申立に係る上訴事件について「禁反言原則は、証拠物又は特定の主張に対し確かに異議がない場合にのみ適用される」と判示している。裁判所は「本件商標異議申立人は、異議申立を受けた商標と異議申立の根拠となる商標とが類似商標を構成するか否かについて意見を述べておらず、さらに異議申立を受けた商標と異議申立の根拠となった商標が類似商標を構成しないことを承認していないため、自ずと禁反言原則は適用されない」との見解を示している。