ニューズレター
私募制度を導入する
証券取引法の部分修正案は、今年1月15日に立法院を通過し、2月6日に大統領により正式に公布、施行された。修正前、公開発行株式会社は、有価証券を発行する際、原則として不特定の引受人に対し公開募集し、一定の比率を現株主及び従業員による株式引受用のため留保することが義務付けられていた。今回の修正では、欧米では既に長年に渡って行われている私募制度(private placement)を導入した。修正要点は次の通りである。
1.私募とは、公開発行株式会社が特定の人に対し有価証券の引き受けを募集する行為を指す。私募を行う際、一定の比率を株主及び従業員の株式引受けに提供する必要はなく、一定の割合を公開委託販売する必要もない。このほか、公衆に対し広告を行し、又は他人を勧誘してはならず、これらの行為は公開募集と見なされる。また、虚偽、詐欺又は他人の錯誤を招く行為があってはならない。
2.私募手続き
(1)株主総会の招集:公開発行株式会社は、証券取引法に従い、有価証券を私募する場合(普通社債を除く)、これを株主総会招集事由に挙げ、以下の3点を説明しなければならない。
①私募価格決定の根拠及びその正当性。
②私募対象の選択方法及び応募者と会社の関係。
③私募を行う必要性。
(2)決議に必要な賛成者数:私募制度は従業員及び株主の優先引受権を排除するため、株主の権益に影響を及ぼす。したがって、出席株主の持ち株全体の割合が発行済み株式総数の過半数を超える株主会議において、出席株主の表決権の3分の2以上によって決議されなければならない。但し、普通社債の私募は、取締役会の特別決議を以って承認されればこれを発行することができる。
(3)分割募集手続:株主総会の議案において私募手続の分割を告知していれば、会社は株主会議決議の日より1年以内に分割して募集手続を行うことができる。普通社債であれば、取締役会の日から1年以内に分割して手続を行うことができる。
(4)私募完成後の証券取引委員会への報告:有価証券の私募を証券取引委員会に事前に申請若しくは報告する必要はないが、株式又は有価証券の対価が支払われた日から15日以内に、関連書類とともに証券取引委員会に報告しなければならない。分割して私募を行った場合、毎回取引完成後にそれぞれ報告しなければならない。
このほか、会社法の規定に基づき、社債の発行額上限は、全資産から全負債及び無形資産を差引いた額とされているが、今回の証券取引法修正後、私募方式で普通社債を発行する公開発行株式会社は、その上限額は、全資産から全負債を差引いた額の4倍とし、前述の会社法の制限を受けない。
3.私募対象:以下の3種に限る。
(1)銀行、手形割引業、信託業、保険業、証券業などを含む金融機関。
(2)一定の資格を有する自然人、法人又は基金。
(3)会社又は関連企業の取締役、監査役又は責任者。第2及び第3種の応募人数の合計は35人を超えてはならない。第2種にいう「一定の資格」とは、近く証券取引法施行細則によって更に詳しく規定されるが、一定の年収や資産規模又は相当の金融知識、経験が必要とされる見込みである。
4.私募の有価証券を取得後満3年以内に譲渡する応募人は以下の制限を受ける。
(1)私募の有価証券を所持する金融機関は、金融機関にのみ譲渡することができる。但し前提として公開市場に同種の有価証券がない場合の売買に限る。
(2)私募の有価証券を取得して1年以上3年未満で、一定期間及び取引数量の制限内において、金融機関又は一定の資格を有する個人、基金に譲渡することができる。「一定期間及び取引数量」の制限については、証券取引法施行細則において近く更に詳しく規定される。
(3)私人間の直接譲渡は、一取引単位の数量を超えてはならず、二回以上行う場合は前後3ヶ月以上の間隔を開けなければならない。
下記の状況下では、私募の有価証券は上述の譲渡制限を受けない。①取得後満3年以上経過している。②法律に基づく移転、又は相続。③その他、主務機関の許可を得ている場合。
上記の譲渡制限は、株式上に明記したうえ、応募人に交付する投資説明書又は関連書類にも明記しなければならない。